ここから出るにはどちらか死ななければなりません
東北上越新幹線編
「ということらしいんだけど、なんで君そんなに落ち着いているわけ?」
「慌ててどうにかなるというものでもないんだろう?」
「だからってこんなときに本を読み始めるか」
「せっかくだからな。読みたい本が溜まってたんだ。持ってきておいてよかった」
「まあたしかに時間は出来たけどさ。もっと他にすることないわけ?」
「と言われてもな、さすがにここで釣りはできん」
「じゃあ僕を殺してここから出るとか」
「するわけがないだろう」
「ああそう」
「そういえばお前、僕のために死んでとか言わないんだな」
「君、僕をなんだと思ってるの」
「俺の片割れだな」
「……ああそう」
「なんだ?」
「別に」
「(別に、という顔ではないようだが)……まあお前と二人だしな」
「そうだね」
「「ここに居るのも悪くない」?」
「じゃあしかたないか」
「ああ、しかたない」
「しびれをきらした秋田がなにかしでかすまで待ってようかな」
「それは長野の方じゃないか?」
「泣くかな」
「お前がいないと泣くだろうな」
「泣かせておいてもいいけど」
「おまえな」
「冗談だよ。さて、じゃあ僕は何をしようかな」
「とりあえず」
「ん?」
「ここだろう」
「……わがままだなあ。本を読むんじゃなかったの?」
「ああ。だからお前は休め」
「はいはい。硬い枕で我慢してあげよう」
出られないなら別に出られなくてもいい、なお二人。

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