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関西在住なのに東日本に思いを寄せる今日この頃 鉄分はほとんどありません…

   

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拍手コメントでなんとなく浮かんだ風景。


 ネタにしちゃってよかったかな?
 でも原型はないかもしれません。






「……」
 地元から出てこない同僚にしびれを切らして直接その場へと赴いた東北は、予想外の光景に扉を開けた姿勢のまま固まった。
 いったいこれはどういうことなのだろう。
「これは、おつかれさまです。東北上官」
 慌てた様子で馴染みの職員がかける声に、はた、と意識を取り戻すが、見間違いではなかったらしく目の前の光景は変わることがない。
 思わず疑問が口を衝いて出た。
「……何をやっているんだ?」
「あの、上官を責めないでくださいね。私たちが引きとめたので」
「そうです。私たちの責任ですので!」
 傍にいた幾人もの職員たちが同調しているが、まず何が起こっているのか説明してほしい。
 しばし考えた東北は、一番手っ取り早い方法をとることにした。
「上越?」
「起きてるよ」
 要するに直接本人に問いかけたのだが、くったりと上半身をソファに投げ出した同僚から返ってきたのは何とも弱々しい声だった。
 なるほど。と、振り返れば、懇願するように見つめてくる職員たちの姿がある。
「この暑さだからな」
「ええ。そちらでも線路が大変なことになっているそうですね」
「ああ。……この水は」
「トンネルの水です!」
「馬鹿、おまえそれは!」
 若い職員の元気な声を、その彼よりは幾分か年嵩の職員が慌てて遮る。
 ちらりとその視線がさまようのを追えば、ゆっくりと上越が身体を起こしているところだった。
 そう。上越は、上半身は投げ出すようにソファにもたれかかり、下半身はスラックスをめくり上げて水の入ったたらいへと足を浸していたのだ。
 おそらく身体を冷やすためだったのだろう。すらりとした足を水から引き上げた上越はすぐさま制服を整え始めている。
 上げられたスラックスから見える白い足がひどくまぶしく隠すのがもったいない。そんなことを思ってしまった自分に何を考えているのかと東北は軽く首を振った。
「もう出るよ」
「いけません、あと少し休憩されてからになさってください」
「それ、朝から言ってるじゃない」
「体調が戻らないのですから仕方ないでしょう」
「大丈夫だよ、自分のことくらいわかってる」
「そうは見えないから言っているのです」
 上官に対し、物おじもしない職員はたしか自分たちの開業式に誇らしげに参加していた人物だったか。
 長い付き合いの賜物と言っていいのか、上越も他の部下とは違った対応をしているようだった。
「でも、ほら東北がこうして来てるくらいなんだよ?」
「それでも、です」
 業務に戻るために、と上越がなんとかあがこうとしても、職員はまったく頓着していない。
 自分の立場など顧みずにただ上越の体調を気遣っている。
 それほどまでに自分の路線を愛しているのだということが、人の機微に疎いと言われる東北にすらよくわかった。
 だからこそ、上越も強くは出られないのだろう。
 小さくため息をついた上越は自分では説得できないと諦めたようだった。困ったように東北へと視線を向ける。
「……東北からも何か言って」
「わかった。俺が看る」
「……は?」
「どういう意味でしょう?」
 ぽかんとしている上越を横目に、怪訝そうにしている職員へ今必要であろうものを言い伝える。
「とりあえず冷やすものを。あと水分と塩分。スポーツドリンクの方がいいか」
「ちょっと東北?」
「これも、ここにいては納得しないだろう。休ませながら戻る」
「何で人のことをこれ扱いしてるんだよ」
「……仕方ありませんね。しかし東北新幹線。一つ言わせていただきますが、上越新幹線は戻るのでなく行くのです」
「それで、なんで君も納得してるんだ?」
「上越」
「何?」
「黙って愛されていろ」
「――な……!」
 ぱく、と口を開いたまま上越は視線をさまよわせている。
 何から言っていいのか、起こるべきか恥ずかしがるべきかと混乱しているのだろう。
 少なくとも二人だけの時とは違い、周囲の目がある分取り繕わなければならないことが多すぎる。
 
 ――熱中症予防には首と名のつくところを冷やすのだったか。
 あわただしく準備を始める彼の職員たちを横目に、東北はまず恭しくその手をとることにした。








 融雪の水でレールが冷やされていれば、というお言葉から。
 浮かんだ風景は、かしずかれるようにして、周りから足元へと水をかけられている上官のお姿だったのですが。
 書き出したらよくわからないことになりました。
 とりあえず上官は地元に愛されていればいいと思います。


 ちなみに。
 首に手首足首、脇の下や足の付け根など太い血管の通っているところを冷やすのが効率的かと思われます。

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