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関西在住なのに東日本に思いを寄せる今日この頃 鉄分はほとんどありません…

   

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9月の拍手お礼会話文+


 我儘な君へ5のお題 (お題 リライト様より)



これではまさに世話係


「ちがう、それじゃないって」
「……どれなんだ?」
「そのみぎのちゃいろの。なんでじぶんのしょるいなのにわからないんだよ」
「片づけたのはおまえだろう」
「きみがかたづけないからだろう!」
「あれはあれでわかるんだ」
「きみいがいだれもわからなくてどうするのさ!」
「おまえがわかればいいだろう」
「……きみのそれってふかいいみはないんだよね。とりあえずひとにたよるな」
「……」
「つごうわるくなったからってだまりこむんじゃない」
「届かないんだが」
「ちっ、つかえない」
「……最初からこうすればよかったんじゃないか?」
「え、うわ?!」
 ひょい、と抱きあげられれば、目前にはまさに目的の物。
 結局どちらが世話をしているのかわからないな、と思いながら上越はそれへと手を伸ばした。



「愛想が尽きた」


「って、まいかいいってるきがする…」
「お疲れだね、上越。アイス食べる?」
「ありがと。これしんさく?」
「そう、長野と東北には好評だったよ」
「おこさましようってことか」
「僕も結構好きだけどね」
「あきたはなんでもすきじゃない」
「そりゃあ、美味しいものだったらね」
「うーん、じゃあいただこう」
「どうぞ。で、どうしたの?」
「あいつ、ぼくにこえかけるひとにいちいちガンつけてるんだ」
「あらら」
「いまはこんななりだしね、しんせつにしてくれてるのにしつれいじゃない?」
「うーん、まあねえ」
「うちのしょくいんおびえさせてどうするんだよ」
「あ、上越こぼれてる」
「え」
「ごちそうさま」
「あきた、くすぐったいって」
「だって、もったいないじゃない。ほらまた手に流れてる」
「……」
「言っておくけど僕にガンつけたって今更だからねー」
「……なにやってるのきみ」
 幼くとも美人というものは迫力がある、と。じろりと睨まれた東北は明後日の方向に感心した。
 それがまた呆れられる原因になることには目を瞑ることにして。



僕以外には無理だろう


「意外と我儘なんだよな。どこも筆頭ってのはそんなものなのかもしれないけど」
「それはつばめのこと? とうかいどうのこと?」
「御想像にオマカセシマス」
「まあきみがふたりのあいてしてくれてるから、こっちはへいおんでいいよ。ありがとね」
「笑いながら言われてもなあ。山陽さんを人身御供にするのはやめてください。つーか、それって俺の仕事なの、ねえ」
「それもふくめてきみのしごとなんじゃないの? それよりそっちのデータちょうだい」
「はいはいっと。これが今度のうちからのね。そっちには結構有益なデータになると思うんだけどさ」
「……ああ、なるほどね」
「でもおまえだけでやるのかよ、これ。結構な量だぞ」
「このすがただし、どこにもいきにくいしね」
「そうかもしれないけどさ」
「そとにでてもけっきょくだれかのせわにならなきゃならないんだから。ぼくもいやだし、あいてもめいわくでしょ」
「いや、喜んでるやつもいるみたいだぞ」
「なにそれ?」
「そのまま」
「? にらまれるのがすきなのか?」
「なんでそっちに行くんだ。じゃなくて、何だよ睨むって」
「それこそそのまま。ぶっそうなじけんがおおいからかな。ちいさいこにこえかけるやつみてはガンつけてるんだよ」
「……東北のことか。小さい子っていうかおまえ限定だろうに」
「どうしたのさ?」
「あいつの相手も大変そうだよな」
 呆れたように溜息をつかれ、さらにしみじみと言われて上越は苦笑した。
 ある意味僕以外には無理かもしれないよねえ、あの面倒くさがりの相手は。
 それは30年近く片割れをやってきたというちょっとした自負もあるかもしれない。
 そんな思いを隠して冗談めかして笑う。
「まあきみほどじゃないけどね」
「……わかってるなら労わってクダサイ」
「あたまなでてあげよーか」
「わ! いや! それはやっぱり怖いしやめとくわ!」
「?」
「……おまえももうちょっと自覚するといいと思うんだ、お兄さんは」
 逆に頭を撫でられて、首をかしげながらも上越はくすぐったさに笑った。



それだけは聞けない願い


「ひま…じゃないけど、つまらない」
「最近内勤ばっかりだもんね。書類ばっかり相手にするのも大変だね」
「それもあるけど、ここからだしてもらえないんだ」
「は!? 何それ、上越って今監禁されてるの?!」
「秋田せんぱい、かんきんってなんですか?」
「……秋田」
「わ、えっとね」
「わるいどくさいしゃにとじこめられてるんだよ。たすけてくれる? ながの」
「とじこめられてるんですか?! えっとぼくにできるなら!」
「上越も、めったな事ば言うもんでねえんだず」
「……独裁者とは俺のことか?」
「きみいがいにだれがいるっていうのさ」
「……閉じ込めてはいないだろう」
「じゃあ、したへのしょるいはこぶくらいしてもいいじゃないか」
「……あまり在来の執務室へ俺たちが足を運ぶのはよくないと」
「なるほど。ほんせんがそういったわけだ?」
「ああ」
「……馬鹿東北」
「東北もなんでもうちょびっとうまく言えねえがな」
「どうしたんですか? 秋田せんぱい、山形せんぱい」
「……わかった」
「「上越?」先輩?」
「してつにいく」
「はい?」
「してつならいまのぼくよりちいさいこもはしってるらしいし。いてもいわかんないよね」
「いやあるって」
「とりあえずじもとにかえる」
「ちょっと待って、上越!」
「とめるな、あきた! ――ひゃっ?!」
 部屋を飛び出そうとした上越は、急に変わった視界と腿と背中に触れる温度に頓狂な声を上げてしまう。
 何が起きたのかと状況を把握して声を上げる前、その状態を引き起こした人物は腕の中の上越と共に部屋からとびだしていった。

「すっごい早技だったね」
「FASTECHは伊達じゃねえんだず」
「えっと、あの大丈夫なんですか?」
「「もちろん」」



本当の願いを言ってごらん


「こら、おろせ!」
「暴れるな、落ちる」
「こんなところでおとすなよ?!」
「だからじっとしていろ」
「……ほんとうに、なにがしたいのさ、きみ」
「おまえこそ」
「しつもんにしつもんでかえすのはしつれいだよ」
「……」
「……まあいいけどね、もう」
「危ないだろう?」
「あばれさせてるのはきみだろう」
「いや、そうでなく」
「?」
「秋田も可愛いと言っていた」
「ぼく?」
「ああ」
「まあこどもってのはだいたいかわいいんじゃない?」
「……おまえほど、は見たことがない」
「……ありがとうというべきなのかな」
「さらわれたりしたら大変だろう」
「あのねえ、みためはどうでもなかみはまえのままなんだけど」
「だから?」
「そうそうさらわれるわけもないでしょ」
「だがこうして」
「それはきみが!」
「俺が? 力がそこそこあって不意をつかれればその姿では抵抗できないだろう」
「……きをつけるってば」
「気をつけてもどうにもならないことだってある」
「わかってるよ! もうきみはどうしたいのさ」
「走ってほしい」
「え?」
「早くおまえと走りたい」
「……僕もだよ」
「そうか」
 ならばいい、と珍しく浮かべた柔らかな笑みに思わず目を見張る。
 結局片割れの我儘を聞いてしまう自分が、嫌なのかそうでないのかもよくわからないまま。
 それでもしかたないな、とほだされたのはきっと望みが同じものだから。
 抱きあげられるこんな機会もめったにないだろうと、今はそのたくましい首にかじりついて堪能することにした。





 実は我儘なのは東北の方ではないのかな、という話。






 そしてたとえばこんなある日。


「さんぽぶんみぎ。あ、もういっぽ。うん、とれた。それからつぎはむこうね」
 最近ようやく耳になじんだ高い声に引かれるように倉庫の奥へと足を向けた秋田は、そこで見られた光景に思わず呆れた声を出していた。
「なにやってるのさ?」
 別に呼びかけたわけではなかったのだが、意外に響いた声は彼を振りかえらせるのに十分だったらしい。不安定だろう足場でくるりと器用にバランスをとって顔を向けた上越は、そこにいた同僚に気付くと小さく首をかしげて見せた。
「あきた。えっと、あっしー?」
「なにそれ」
「え、わからない? ばぶるをしらないせだいにはむりか」
「いやいや、言葉自体は知ってるけど」
 移動手段として利用する人を指す言葉だったか、まさに言葉通りと言えば確かにあらゆる意味で自分たちはそうなのだけれど。しかし、仏頂面で肩車をしている同僚を指してアッシーとは、上越以外にはあまり言えない台詞だろうと秋田は思う。
 しかしそんなことよりもまずは確認しておきたいことがあった。
「ねえ、二人して何してるの?」
「ちょっとさがしもの。あー、もうなんでこのばしょこんなになってるのかな。とうほく、いっかいおろして。ちょっとけんさくしてくる」
 秋田の問いに再び視線を書棚に向けた上越だったが、そこに彼の探すものは見つからなかったようだ。幼いながらも整った眉を顰めると、ぺしぺしと自分が台にしている男の頭を叩いた。どうやらそれが降ろせ、という意味らしい。そしてその通りにゆっくりと膝を落とした同僚から飛び降りると、以前では考えられないぱたぱたという軽やかな音を立てながら上越は入り口近くのテーブルへと向かって行った。
 その小さな背中を見送って、秋田は膝についた埃を払っているその男へと視線を向ける。
「東北?」
 その声音に何を感じたのか、東北はすっと視線をそらした。どこか後ろめたそうなその様子に秋田はけげんそうな表情を隠せない。なぜならそれは自分が何かやりましたと言っているようなものだったからだ。
「……必要な書類を探していただけだ」
「ああそう」
 それは間違ってはいないのだろう。ただ、おそらくそれがすべてではないだけで。
 では何を隠しているのか。さらに問いかけようとしたところに。
「もう、なんでぜんぶばらばらにおいてあるんだよ! きみどういうかたづけかたしたのさ?!」
「……」
 目次ファイルを広げていた上越の半ば叫ぶような声が聞こえ、同時に東の筆頭様の表情がかすかに変わるのが秋田にも見て取れた。
「なるほど、君が片付けた書類なんだ」
「……秋田。今度の会議の参考書類だが」
「ああ、前例が載ってるやつね」
「どこかで見かけなかったか?」
 困ったような声にその内容を思い出して秋田も納得する。それは確かに急いで見つけなければならないものだろう。だがしかし。
「あれって、この間東海道に言われて借り出してなかった?」
「その後、また片付けたんだ」
「すぐに必要になるのに?」
「……」
 また黙り込んでしまった東北の横顔に、ふとある考えが浮かぶ。
「……君まさか」
「ちょっと、ほんとうになんでしたにあるはずのしょるいがうえにならんでるの?」
 もう! と頬を膨らませている今は幼い同僚を見る。
 今にも地団太を踏みそうな上越は確かに怒っているのに、怒っているのはわかるのに、その幼さの方だけが際立ってまるでこどもが精いっぱい大人の真似をしているようで大変かわいらしい。
 秋田ですらそう思うのだ。ならば、表には出さないものの彼を溺愛している者ならば。
「東北?」
 じっと小さな同僚の背中を見つめたまま視線を合わせようとしない東北に確信する。
「……いたずらするなら自分の置いた場所くらい覚えておけば?」
 その言葉は的中していたらしい。
 東日本をその肩に背負っているはずの同僚は気まずさを隠しきれない表情で、こくりと頷いていた。




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