なのに、誕生日記念でなくこんなものをアップ
むしろ東北上官をいじめている…?
実は完結していないころは、靴跡の続きで本日東北上官を祝おうとしていました
でもやっぱりあれはあれで終わった方がいいのかな、とやめましたが。
どうせハッピーエンドになりますけども続き見たい人とかいるのだろうか。
さて、アンケで2位だった二人の小ネタです。
アンケ始めてとととん、とここに票が入ったのでなんとなくこんな二人に。
最初に書いた文がおかしすぎて3000文字ほどざっくり消しましたが
やっぱり微妙な文章です。文才が欲しい…
ぐだぐだなサイトですが、拍手押してくださり本当にありがとうございます。
いちゃいちゃかっぷる5題 (お題
207β 様より)
「はい。あーん」
「あーん。ん、おいしい。じゃあおかえしー」
「んー、こっちもいい味」
いったい何が起こっているのだろう。
ぽかんと口を開けた山陽の姿は、せっかくの色男が台無しだと彼のファンが見ればハンカチを握りしめて嘆くような間の抜けた状態だった。いや、もしかしたらそんな姿もまた乙女心をくすぐると惚れ直す者もいるのかもしれないが、それはさておき。
山陽は目の前で起こっている事態について行けず、口に運ぼうとしてこぼれた菓子のかけらを机上からそっと拾いながら、心を落ち着けようと深呼吸した。
それはある日の東京駅高速鉄道休憩室。
次の業務までに少し時間のあった山陽が部屋に入ってみると、そこには型の同じ色違いのエプロンを着た東日本所属の高速鉄道二名がいた。時計を見ればなるほど、おやつの時間だ。忙しい業務の合間をぬっての食事調達にはある意味頭の下がる思いがするものの、誘われればご相伴にあずかることに否やはない。差し出されたティーセットと茶菓子を有難くいただいていた山陽だったが、繰り広げられる光景に、おもわず菓子をとる手は止まっていた。
深呼吸を終え、再びじっと、テーブルを挟んで向かいにいる二人を見つめる。
体格だけ見れば立派な成人男性である二人だが、全体でみればその華やかな容姿も相まって、どこか性別を感じさせない美しさがあった。
だから、お互いに本日のおやつを食べさせるその様子はいい年をした男性同士が絡み合っているという、言葉からすればだいぶ薄気味の悪いものなどではなく、むしろ見てはいけない乙女の花園を垣間見たような不思議な後ろめたさを山陽に感じさせていたりもした。
しかし、普段なら楽しんでしまえるだろうこの状況が今受け入れられないのはそういう問題ではない。自分の横に座る者の不穏な空気をひしひしと感じているからだ。
「えー、と。あのな」
「さすが秋田だよね。本当においしい」
「上越が手伝ってくれたからだよ」
「ありがと、でも作ったのはほとんど秋田じゃない」
「サポートが良かったの、僕一人じゃこうはいかないって」
いちゃいちゃしているとしか言いようのない二人に、外からかけようとする言葉が届くことはない。
がっくりとうなだれてしまう山陽の横で、黒いオーラはどんどんと広がっている。もしこの場に長野がいたら泣き出してしまっただろう。いやその前に長野を泣かせるような真似は誰もがさせないだろうが。いっそ東海道でもいれば読めない空気を王様の我儘でぶち壊すこともできたかもしれないが、残念ながらそのどちらもこの場にはいない。よって、被害は全て空気を読んでしまう山陽一人にふりかかっていた。
「……おまえ、なにやったの?」
思わず嘆いてしまうが、自分の隣に座って憮然としている同僚からの返答はない。返す言葉もないのか、目の前のことに気を取られ過ぎているのか。
目の前の甘い雰囲気と横からの暗雲漂う雰囲気に、もう逃げたいと、泣きそうな気分になる山陽だ。
自分だって許されるなら、目の前の二人のようなことを愛するハニーとしてみたいなどと思考を逃避させてみるが、良くて鉄拳か悪ければ蔑んだ目で見られた挙句長期間避けられ続けることになるという予想しかたたないし、それはまったくもって遠慮したいところである。何にしろ、美味しいはずの菓子や茶の味もわからなくなってしまっていることは残念だが、ここは早々に退散するのが心の平穏のために必要なことだろう。
一かじりしかしていない菓子を何かに包んで持っていくべきかと思案し始めた(残すことはさすがにもったいなくてできない)山陽の前で、不意に秋田が高い声を上げた。
「あ、上越ついてるよ」
「え。どこ?」
「そっちじゃないって」
「んー?」
口元に菓子のかけらをつけた上越が首をひねる。手でとろうとしているが、微妙に外れたところにばかりその手は伸びていた。
取れそうで取れないその状態に、む、と眉をひそめる上越はどこか幼くて庇護欲がそそられる。思わず苦笑して取ってやろうかと腰を上げかけた山陽の目の前で、同じように秋田もかわいくて仕方がないというように苦笑して上越の頬に手を添えた。
「ああ、もうこっちだよ」
ぱくり。
「え」
「……!」
「ん、おいしい」
「ちょっと、もうくすぐったいってば」
呆気にとられる山陽など気にすることもなく、秋田は直接口でとったその菓子の美味しさに笑みを浮かべ、上越は触れられた頬にくすぐったさを感じて笑っている。
確かに、菓子はおいしいだろうし、頬もくすぐったいかもしれないが。
本当に隣の彼は何をやったというのか。怖ろしさに横など振りむけない。
ブラックホール並みの重力まで現れた室内の一部へと、ようやく今気付いたかというように二人は顔を向けて笑った。
「「あげないよ?」」
何も知らなければただの楽しそうな表情の裏に何かを感じ、やはり回避はできないのだろうな、と山陽は諦念の笑みを浮かべた。

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